はじめに
会社の破産手続が開始されると、会社の正当な債権者のための回収の最大化が最重要の法益となる。
会社の資産を枯渇させるような追加費用の発生を回避して清算処理を円滑かつ効率的なものにすることにより債権者の利益保護を図る趣旨で、シンガポール法においては、清算処理中の会社を濫用的な訴訟から保護すべきであると長い間認識されてきた。かかる保護は、2つの方法で行われている:
- 2018年倒産・再生・清算法(以下「IRDA」という。)の規定に基づき、裁判所の許可がない限り、清算処理中の会社に対して法的手続を開始することはできない。
- 裁判所の許可がない限り、会社のliquidator、すなわち当該会社の清算処理を行う管財人や清算人に対して、いかなる法的手続も提起できない。これは判例法に定められたコモンロー上の原則である。
この点、会社の清算処理を進める過程で、管財人や清算人が第三者と個別契約を締結する必要が生じることがある。その場合、そのような個別契約から生じる訴訟手続も裁判所の保護の対象となるかどうかが問題となる。
Introduction
When a company goes into insolvent liquidation, maximising recovery for the company’s legitimate creditors takes highest priority.
In order to better protect the interests of creditors, Singapore law has long recognised that a company in liquidation should be protected from frivolous lawsuits, in order to ensure that the liquidation process is carried out smoothly and efficiently without incurring additional costs depleting the company’s asset pool. This protection comes in two ways:
はじめに
2025年6月13日、「円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律」(以下「早期事業再生法」又は「法」といいます。)が公布されました。早期事業再生法は、公正中立な第三者機関と裁判所が関与する形で多数決(議決権の総額の4分の3以上の同意等)による債務整理を新たに認めるものであり、日本の事業再生の実務に重要な影響を与えるものです。
早期事業再生法の公布を受け、2025年9月、産業構造審議会経済産業政策新機軸部会事業再構築小委員会の下に「早期事業再生検討ワーキンググループ」(WG)が設置され、事業再生の専門家を委員※1に加え、制度の詳細や運用について検討が行われました。同WGは2025年10月から12月にかけて3度開催され、同年12月26日、「中間整理」が公表されました※2。その後、関係団体から寄せられた意見や2度のWGでの議論を踏まえて、2026年3月6日、「中間整理」の内容を一部修正した「取りまとめ」が公表されました※3。これらの意見や議論からは、対象債権者となる金融機関やリース会社に対する手続への関与・協力等に対する期待が窺われます。
はじめに
2025年6月13日、「円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律」(以下「早期事業再生法」又は「法」といいます。)が公布されました。早期事業再生法は、公正中立な第三者機関と裁判所が関与する形で多数決(議決権の総額の4分の3以上の同意等)による債務整理を新たに認めるものであり、日本の事業再生の実務に重要な影響を与えるものです。
早期事業再生法の公布を受け、2025年9月、産業構造審議会経済産業政策新機軸部会事業再構築小委員会の下に「早期事業再生検討ワーキンググループ」(WG)が設置され、事業再生の専門家を委員※1に加え、制度の詳細や運用について検討が進められています。同WGは2025年10月から12月にかけて3度開催され、同年12月26日、中間整理が公表されました※2。中間整理では経済産業省令で定められる内容やQ&Aで明確にすべき内容について提案されており、制度の内容や運用について理解する上で重要な意義を有します。そこで、本ニュースレターでは、中間整理の主な内容を紹介します。
Introduction
I. Introduction
はじめに
コロナ渦におけるゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)が終了したものの、物価高騰・人手不足等の外的要因も重なって収益が改善されず、ゼロゼロ融資等で増加した金融債務の返済や、税金や社会保険料といった公租公課の納付ができないことが原因で法的整理に至る中小企業・中堅企業等が近年増加しています※1。
そのような中、東京地方裁判所民事第20部(倒産部)が、今年4月から、負債総額50億円未満の株式会社を対象とする、簡易・迅速な会社更生手続の運用(小規模会社更生)を導入しました※2。
この小規模会社更生は、公租公課の納付に苦しむ中小企業・中堅企業等の事業再生における選択肢の一つとして注目されます。そこで、本ニュースレターでは、公租公課の納付が困難な中小企業・中堅企業等の状況について紹介した上で、小規模会社更生の概要、その活用方法や今後の検討が期待される点について紹介します。
公租公課の納付が困難な中小企業・中堅企業等の状況
1. 私的整理
はじめに
1. はじめに
2025年1月、企業倒産手続の簡易版プログラム(Simplified Insolvency Programme。「SIP」)の改正に関するシンガポール倒産・再生・解散法改正法案(Insolvency, Restructuring and Dissolution (Amendment) Bill)が可決されたため、本稿では改正内容を概観する。
2. 企業倒産手続の簡易版プログラム(SIP)とは
SIPは、パンデミック期間中であった2021年1月に、財政難に直面した中小・零細企業(micro and small companies/MSCs)の破綻処理を支援するために、暫定措置として導入されたものである。これは、会社再建のための債務整理や会社の効率的な清算のために、迅速かつ費用対効果の高い簡略化された手続を提供することを目的としたものであり、概要以下の2つに分類される。
はじめに